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Artist

ZAIKO LANGA-LANGA

Title

LES EVEILLEURS DE L'ORCHESTRE ZAIKO LANGA-LANGA VOL.1


zaiko vol.1
Japanese Title

セメキ・モンド

Date 1973-1975
Label NGOYARTO NG013(FR)/グラン・サムライ PGS-84D(JP)
CD Release ?
Rating ★★★★☆
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Review

 60年代を席巻したフランコ、ロシュロードクトゥール・ニコら第2世代に代わって、70年代はじめに頭角をあらわしたのが“ザイコ・ランガ・ランガ”(以下、ザイコ)に代表される第3世代。キューバ音楽の影響を残していた第2世代にたいし、ロック世代のかれらはホーン・セクションを廃し、ギター・バンドのスタイルを基本とするワイルドでタイトなサウンドを生みだした。また、ゆったりと歌とハーモニーを聴かせるヴォーカル・パートのあと、後半にテンポ・アップして、“セベン”といわれるインストゥルメンタル中心のダンス・パートが加えられた2部構成(正確には「ルンバ - サカデ - セベン」)を採用したのもザイコが最初といわれている(わたしはそうは思わないけど)。そして、セベンでは聴衆にダンスを煽る“アニマシオン”とよばれる掛け声が加わり、現在のルンバ・ロックとかリンガラ・ポップといわれる音楽の基本型をかたちづくったのもかれらである。

 ザイコは、1969年のクリスマスに、ニョカ・ロンゴ、パパ・ウェンバ、エヴォロコ・ジョッケー、マヴエラ・ソモ(以上ヴォーカル)、それにマヌワク・ワク(ギター)といった、現在のリンガラ・ポップ・シーンを語る上で欠かすことのできない重要人物たちによって結成された。折りしもモブツ大統領がうちだしたオータンティシテ(伝統回帰政策)が追い風となって、多種多様な部族の伝統文化の要素が強化され、最新の外来音楽と綯い交ぜになって魅力的な混血音楽として結実した。

 ダンサブルをより強化したのが、第3世代の特徴であり、ダンスには名まえが付けられ、ダンスのヒットが楽曲のヒットにつながるというのがコンゴでは一般的らしい。ザイコを一躍スターダムにのし上げたのは、72年にはじめたダンス“カヴァシャ”の大ヒットがきっかけであった。しかし、75年には、ウェンバ、エヴォロコ、マヴエラら主要メンバーがグループを離脱。ニョカ・ロンゴを中心にグループの建て直しをはかる。82年には“カヴァシャ”以来の大ヒットとなるダンス“ゼケテ・ゼケテ”を生んだ。たび重なる分裂やトラブルにもかかわらず、つねに新しい血を注入しながら、現在もしぶとく生き残っているロンゴの生命力の強靱さには頭が下がる。

 本盤は、ダンス“カヴァシャ”をヒットさせた73年から75年にかけてのシングルをコンパイルした第1期ザイコの貴重な記録である。キンシャサのチンピラみたく、ひたすら威勢よく肩ひじの張った若き日のロンゴ、ウェンバ、エヴォロコらの歌声を聴くことができる。後年の美しいハーモニーとはまったくちがうラフでアグレッシブなヴォーカルがかっこいい。マヌワクのギターも、ドクテュール・ニコやフランコの端正なギターとは対照的な、ワイルドでロックっぽい表情をたたえている。そんなところが、どこか初期のローリング・ストーンズを思い起こさせたりもする。

 フランスのレーベルNGOYARTOから出た本盤には、続編として"LES EVEILLEURS DE L'ORCHESTRE VOL.2"(NG014)がリリースされている。こちらは、シングル、アルバム、ライブからの音源で、"VOL.1"同様、音質は劣悪だが、内容はすばらしい。国内では、グランサムライから『ムワナ・ワビ』(PGS-85D)のタイトルでディストリビュートされている。
 また、1969年から70年にかけてのザイコ最初期の幻の音源を復刻した"LES PENETRES"(邦題『HAWAI PLEIN AIR』)(NGOYARTO NG017/グランサムライPGS-89D)、70年から74年までの11曲からなる"HITS INOUBLIABLES VOL.8"(LES EDITIONS PLUS DE PARIS EPP18)もファンには見逃せない。第2世代の影響を受けたゆったりした優雅な曲調が中心で、ヴォーカル・パートとダンス・パートの2部構成のスタイルが確立されてゆく過渡期のザイコの姿がここにはある。'SELENGE'という曲では、すでに2部構成になっていて、セベンの部分で「カヴァシャ、カヴァシャ」と発するアニマシオンが聞き取れるし、5分ぐらいの短い曲にも後年の萌芽をはっきり見てとることができる。
 
 なによりも驚いたのは、デビューの時点で、かれらは早くも良質で洗練されたリンガラ・ポップを演奏していたということ。ヴォーカル・ハーモニーやアンサンブルの点では前述の2枚よりもまとまりのよさが感じられる。「ザイコらしさ」を抜きにして、好みだけでいうなら、個人的にはこれら最初期の2枚のほうが肌に合っている。

 さて、これからザイコを聴いてみようというひとには、上の4枚はとっつきづらいかもしれないので、まずは、つぎの2枚からはじめてみてはどうだろう。
 ウェンバら主要メンバーが離脱した直後の76年、新生ザイコがガーナに出向いて録音した"ZAIRE-GHANA"(RETROAFRIC RETRO 5CD,1993,UK)は、まだ埃っぽさというかロックっぽさを残していたころの、甘美でスリリングなサウンドを堪能できる初期の傑作。以前、ヴァケーションから国内配給されていたが現在は品切れ。しかし、輸入盤なら入手が比較的容易だ。
 さらに、ゼケテ期の大ヒット4曲と、フランコのT.P.O.K.ジャズにいたマディル・システムをゲスト・ヴォーカルにむかえたフォルクロール2曲を収めた83年の"ZEKETE - ZEKETE 1ER ET 2EME EPISODE"『フォルクロール・ゼケテ』(B.MAS BMP950044/グランサムライPGS-74D)はザイコの最高傑作として名高い。ソフィスティケートされ透明度が高まったぶん、ロックっぽさは後退するものの、リキンガのビロード・ヴォイスはかぎりなく美しくセクシーだ。


(2.17.02)



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by Tatsushi Tsukahara